ライフ・ゴーズ・オン

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雨・雨・雨-rain,rain,rain-

 

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朝靄を空に裂いた

君のその柔い手が

白銀製の帳を

たやすく浚っていく

 

知らぬまま

大人になるほど

懐かしさは残るけど

それも全部かき混ぜて

回り出す今日は奇麗だ

 

時間が音をたてながら

崩れていく最後を

君はなぜか悲しそうに

笑いながら踊るWonderland

 

またあの日と

同じようなさ

星空に呑まれては

 

紡ぎ出した言葉通りの

想い 熱を放て

 

Alice in 冷凍庫/feat.IA-Orangestar(一部抜粋)

 

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恋愛をする際、いつだってお互いの間には認知と温度の差があるものだ。

ぼくはいつだって本気で、世界に君しかいないって顔で愛を囁き続けたのだけれど、彼女はただネット恋愛と遠距離という要素のせいでぼくと大きな感情の隔たりがあったようだ。

 

出会いはTwitter

同じゲームをしていたことと同じ映画趣味な二人、意気投合するのに時間はかからなかった。

 

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断っておくとぼくは彼女のことを嫌っても恨んでもいないし、全部彼女が悪いんだと言うつもりもない。ただぼくがふがいないのと、遠距離だったのが寂しがり屋の彼女にはキツかっただけの話で、こんなのはきっといつでもどこでも発生しているものだ。

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仲良くなってゲームをしてLINEを交換して二日目、彼女はさっそくその苛烈な性格の片鱗を見せ始めた。

何が気に入らなかったのかはよく覚えていない。とにかく彼女はぼくの性格の何かにムカついたようで、そして長文で罵倒してきた。

当然ぼくは憤慨した。知り合って二日でなんだお前は。俺の何を知ってるんだこいつは。10年以上付き合った友人にさえここまで罵倒されたことがないのにポッと出のクソアマになんで言われなくちゃいけないんだ、と。

ぼくは縁を切ろうとおもった。インターネットで出会っただけの女だ、ここで切っても実生活になんの影響もない。だれもがインターネットではそういって気軽に友達をつくって、その裏で縁を切っている。それがこの時代のスタンダードだったしそれが正義なのだ。今もそう思っているが、この時ぼくは縁を切れなかった。いや、むしろ離れ難くなってしまったのだ。

実際彼女の罵倒は全て図星で、的確にぼくの悪いところを指摘していて、確かにここは直したほうがいいことだな、なんて思ってしまって。それでなんだかそれが心地よくなってしまって、ありがとう、と答えた。

 

彼女としてはここまで言っても離れていかない僕をまともだと感じたのかそれともなんなのかはわからないけれど、この日から加速度的に仲良くなった。

彼女はよく人生相談をぼくにしてきた。それにぼくは超真面目に答えた。

気休めの言葉とか、無関心な肯定とか、そんなことはしなかった。これで嫌われてもいいとも思った。きっと自己満足だったのだけれど、それでも彼女には平和に楽しく笑顔で生きていてほしいと思った。

 

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ぼくたち2人が恋に落ちるのもそうおかしな筋書きではなかったと思う。

四六時中LINEをしていたし、家にいる時は常にVCで繋がっていたし、寝るときはかならず通話を繋げたままだった。

このままの関係を続けていたらきっと私たちは恋人になるんだろうな、ってきっと彼女も感じていたはずだ。

 

ぼくはもう最初から好きだったから頃合いを見計らって告白した。

ぼくはまだ大学生で、しかも住んでいる場所も離れている。お互いの顔も直接見たことがないしなんなら名前だって知らない。それでも伝えずにはいられなかった。

好きで好きでしかたなくて、彼女の声、二度ほど見せてくれた彼女の写真、テレビ通話したときの彼女の恥ずかしそうな目、ぼくをからかうときの楽しそうな声、案外臆病でホラー映画を見たあとにすごく甘えてくるところ…。

彼女の全てが愛おしくてたまらなかった。

 

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そうして恋人同士になったのだけれど、最初から彼女が渋々だったんだろうなってのはわかっていた。

ぼくが熱烈にアピールするからきっと面倒になったんだろうと思う。

彼女もぼくのことを好きだったのは間違いない。そう信じている。

でも、彼女はずっと「会ってからのほうがいい」「きっと会ったら幻滅する」と言い続けた。

 

そして、特にぼくが言われていたのは

「私のことが好きになったのは寂しかったからでしょう?」

だ。

 

結局のところそれはぼく側の話ではなくて彼女が自分のメンタリティを認めたくないためだけにそう言い続けたんだろうと思う。

寂しがり屋で寝た後も通話を繋げていないと怒るし、他の人と遊んでいいよと言われてその通り他の人と遊んでいると、「ああ、私と遊ぶの楽しくないんだ」とか言われた。

「いやそんなことじゃないだろ…俺にだって友達がいるんだぞ?」と言ったところで友達のいない彼女にはそんなこと認められるわけもなく、そういって彼女の機嫌が悪くなるのもしばしばだった。

 

そういう積み重ねが僕たちの仲を裂き始めた。

毎日喧嘩のような言い合いをして、ぼくが怒ったり彼女が怒ったり。いつもぼくが最後に謝っていたけれど…。

 

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付き合って一ヶ月後、ぼくはフラれた。

正確には「あなたには冷めました」と言われただけでぼくはフラれたとは思わなかったのだけれど、彼女からしたらそれはもう終わりの合図だったらしい。

 

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これ以上書けそうなこともないのでオチを書く。

この話のオチは

いつのまにか彼女に三股されてて

「この人とはもう終わってたの」と言ってたA男とはまだ繋がっていて、お金をもらう代わりにセックスしてたし

「あなたと付き合う前に別れたの」と言ってたB男ともまだ繋がっていて、お金をもらう代わりにセックスしてたし

「お金くれるから」と言ってたC男とはぼくと付き合いながら連絡を取り続けて、彼女が東京に来た時もぼくとセックスした後C男の家に行ってセックスしていた(セックスハシゴするのすげえよ)

風俗やってないって言っていたのに普通に風俗をしていたし

ここまでくるとなにが本当で嘘かもわからない

もしかしたら教えてくれた本名も違うのかも

ハーフってのも違うのかも

本当は実家住みなのかも

 

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ぼくは全部全部全部許せたのに、彼女が良心の呵責に耐えられなくなったのかは知らないけれど最後に「結局お前はその程度の男だったんだよ」って鋭すぎるセリフを吐いて、もうそれっきりだ。

 

ぼくは人生でこれほど人を好きになったことがない。

でも、もしやり直したとしても上手くいくとは微塵も思わない。きっと彼女はあのメンタリティのまま今もゴキブリとネズミだらけでいじめっ子のいる汚いシェアハウスで縮こまりながら男をたぶらかして生きている。彼女は認めたがらないだろうけど…

 

治るとは思えない。それに今回はぼくが割を食っただけでそういう生き方ができるのならやればいいと思う。賢いし、金銭的には楽だろう。

精神的には厳しそうだ。そういう事例を目の当たりにしたからよくわかる。

 

彼女はどうすれば幸福になるだろうか。あのホコリ臭い部屋から出て自分の価値を正しく見つめて、人を利用すること以外の生き方を見つけるまでは幸せだと彼女は心から思えないんじゃないか。

きっと大きなお世話だね。

 

まあでも幸せに生きていてくれたらいいなって今は思う。

 

君を幸せにするのはぼくでありたかったし

君を笑顔にするのはぼくでありたかったし

君の横に立つのはぼくでありたかった。

もう叶わないけれど。

 

もうこれから関わることもないだろう。

狭い界隈だからいつかまた出会う日が来るかもしれないけどそれはそれで面白そうでいいかな。

 

関わりたくても関わらない

触れたくても触れられない

だから祈るよ。

 

ただどうか、幸せに。

笑顔に、

自由に、

平和に、

生きていてほしい。