悲しみと邪悪

登場人物

A男:小学校来の友達 幸せになって欲しい

B子:メンヘラクソ女 報いを受けるべき

C男:片親障害者 お前を救いたい

D男:B子の元カレ いいやつ

 

 

B子はクソ女で、男のとっかえひっかえを繰り返す女だ。同じゲーム仲間の中でも隙あらば他の男を狙っているような節度のない女で、その男が彼女持ちであろうとなかろうと関係がなかった。

 

かつてB子はD男と付き合っていて、当時からその目に余るメンヘラっぷりで周囲を掻き回していた。

ODをしたりリスカをしたり自殺未遂をしたり。

挙げ句の果てには鍵付きで窓のない精神病棟にぶち込まれる結果になるし、性格面でも情緒がかなり不安定ですぐ泣いたり怒ったり、社会不適合な生きづらい人間だったのは間違いなかった。

 

そんなB子はある日突然D男の悪口をみんなの前で言いだし、最終的にはC男と付き合い始めた。

正直意味がわからなかったけどおもしろいし実害はないのでそのままにしていた。そんな出来事もあってB子に対する不信感や嫌悪感は日に日に増していったんだと思う。

 

僕やそれ以外とも折り合いが悪かったB子は急に彼氏とその親友たち以外のすべての人間を切り捨て、小さなDiscordサーバーを建て閉じこもるようになってしまった。

まあウザい女と関わることもなくなるしむしろ大歓迎なことではあったからそれっきり女と関わることはなかった。

 

 

それが今年の6月、僕たちの耳を疑うような事柄が伝えられた。

なんとA男とB子が付き合い始めたというのだ。

ぼくは思った「え?C男は?」と。

でもまあB子は別れる前にキープの男を作るタイプだったし、前からA男のことはお気に入りだったみだいだし妥当なのかな、と思った。

これでA男が痛い目を見ても、上手く恋人になれてもどっちに転んでも面白いし、B子がいくら社会不適合者でもA男にとっては初めての彼女だから素直に応援してやるつもりだった。

デートに来て行く服やおススメの居酒屋やレストラン、デートスポットなどをみんなで出し合いA男をサポートした。

A男は仕事で稼いだ金をすべて貯金しているようなタイプで、僕たちにはいくら貯金をしているのか言わなかったけど、大学を中退した5年前からずっと貯金しているとしたらもうかなりの額になっているし、そこもかなりのアピールポイントになり得るじゃないかと思った。

 

でもA男はウキウキでB子との馴れ初めや2回行ったデートの内容を話していたけど、話を聞けば聞くほどそれはただの「キープ」の男でしかなく、彼自身気づいている様子はなかった。B子はそういう恋愛ばかりしてきたから本心を隠すのが上手かったし、相手のA男は年齢=彼女ナシの童貞だったから勘違いするのも無理はなかった。

 

でも、それでも上手くいってほしかった。初めての彼女、初めての恋愛、どれも彼の人生には起こり得なかったイベントだったのに。。。

 

 

一昨日友人たちと宅飲みをした。

その中にはB子と親しい男もいた。

 

その男は言った。

「B子は二回A男とデートしたらしい。でももう会いたくないんだって。理由はA男が『超ブサイク』で『ニート』で『童貞』だから。それにあまりにもブサイクだったから会って以降冷たくしていたらVCで泣かれた。そういうメンヘラなところもキモかった。やっぱ今の彼氏が一番!♡ だってさw」

 

 

みんなは笑っていたけど俺は言葉が出なかった。

焼酎のソーダ割を片手にうつむいて何も言えなくなっていた。涙が出そうだったけど我慢した。

恋愛経験のない24の男を弄んだB子に言いたいこともたくさんあったが、俺の心を傷つけたのは『ニート』という事実だ。

彼は俺たちにずっと仕事をしていたと言っていた。17時頃までインターネットには浮上しなかったのだ。5年間も!

だから誰も疑いはしなかった。暑い夏の日や雨の日はたまにサーバーにいたけど、そのときは決まって「今日はたまたま休みなんだ」と言っていた。しかしそれも月2~3回で、俺たちは大学にバイトに仕事がある身だったから大して疑いもしなかった。

 

B子に裏切られたA男を笑う準備をしていたのに知らず知らずに裏切られていたのは俺たちだった。

この感情をどう処理すればいいかわからない。

話を聞いて二日経ったがまだ悲しい気持ちが残っている。

A男の気持ちになって考えてみると実際俺たちには言いにくいのもわかる。

それでも言ってほしかった。10年以上も付き合った友達に隠していたことをポッと出の女に打ち明けることは容易いのもわかる。

でもそんなことを告白するのもアホだなと思った。おかげで彼は完全に終わっているのだから。

 

 B子はそんなA男とはセックスできないと言い、即日大阪にいるC男をホテルに呼びつけたと言う。

それなのに来週開催される社会人ゲーマーたちのBBQにB子は参加するらしい。そこには大手IT企業に勤める男や顔のイイ男がたくさん来るので、B子はそこで新しいキープを作るそうだ。

 

 

どうすればいいかわからない。

A男がフラれたら慰める準備をしていたけど、まさか構ってくれないからって泣くようなメンタルの持ち主だとは思わなかった。もう俺たちは何も言えなくなった。

だまってA男が傷つく姿を見守るしかない。5年間も俺たちにニートである事実を隠していた彼のプライドはかなり高いものがあるだろう。もしかしなくても学生や社会人である俺たちとは一定の距離感があったのだろうか。俺たちに嫉妬していたのか。。。

 

何もわからないが、何も言えないということだけはわかる。

フラれたところに知った顔の俺たちが慰めにいったら彼がどんな気持ちになるか想像に難くない。

苦しい気持ちで彼を見守ることしかできなくなったのだ。

 

 

B子は報いを受けるべきだ。

家庭状況や彼女の遍歴や病気のことを鑑みると多分30代後半には完全に人生が詰む。

それまでに彼女は幸せをつかまなくてはいけない。そうでなくては夜職をやるしかないが30代後半の女がそれから夜職を初めてどこまでいけるかも見ものではある。

ただそれ以前に俺はあの女に報いを受けてほしい。

すべての人間から拒絶されることを味わってほしい。彼女が父親の愛を求めて彷徨う化け物であろうがなんでもいい。自殺未遂じゃなくてそのまま自殺していればよかったんだ。

あの女が生きてるだけでこれから10年は悲しむ男が幾人も誕生することはあまりにも苦しい。

 

とはいうものの、正直俺はみんなに幸せになってほしかった。

関係ない人間がいくらB子に翻弄されようがガチでどうでもよかったし、そんなものただの笑い話でしかないが、身近にいる何人もがこうやって被害を被ると悲しいものがある。

 

 

 

悲しみも苦しみも裏切りも邪悪もなくなればいいのに

この世はそうはいかないみたいだ